全国の生協では、東日本大震災を忘れないとりくみをすすめております。
みやぎ生協から届いた被災地・宮城のいまをお伝えします。
震災から立ち上がる力を、子どもが自ら培う場
「子どもなのに“震災だから”とじっと我慢していた。みんな“いい子”なのが逆に心配」。あるお母さんの言葉です。狭くて十分な勉強場所がない仮設住宅、自由に部活ができない校庭、下校時間が決まっているスクールバス通学など、子どもたちは様々なストレスを抱えながら、この6年を過ごしてきました。
宮城県女川町にあるコラボ・スクール「女川向学館(以下向学館)」は、認定NPO法人カタリバが「子どもたちに震災のせいで夢をあきらめてほしくない」との思いから、地域の協力を得て始めた放課後学校です。下校後、子どもたちが落ち着いて勉強ができる「学びの場」と安心して集まれる「居場所」を提供しようと、2011年7月に開校しました。
向学館の多田有沙さんは「女川は小学校も中学校も一つしかない小さな町。学校の成績が悪いだけで“自分は勉強ができない”と思い込んでしまう子が多い」と言います。向学館は、対話を重視したプログラムで、そうした子どもたちのヤル気と自己肯定感を引き出し、“自分も頑張れる”と自信を持って勉強に取り組めるよう指導しています。しかしなかには“頑張れない子ども”もいます。「違いは夢や目標を持っているかどうかです」と多田さん。将来自分は何になるのか、学んだことを将来どう活かすのかー。向学館では、子どもたち自身が自分と将来について考えるキャリア教育にも取り組んでいます。
子どもたちは向学館で勉強するだけでなく友だちとお喋りにも興じます。スタッフに悩み事を話すこともあります。まさに子どもたちが安心して集まれる「居場所」がそこにはあるのです。
震災は子どもたちから多くのものを奪いました。それでも子どもたちはたくさんの人の支援に背中を押され、自分の道を拓いてきました。
向学館はいま、自発的に勉強や調べものができる部屋を設けようと準備しています。「本やパソコンを使って自ら興味関心の幅を広げる、そんな居場所を自分たちの手でつくっていってほしい」と多田さんは期待を寄せます。子どもたちがこの場所で、震災の悲しみを強さに変える力を培っていけたらとの願いも込められています。
被災地では多くの大人が添え木となって子どもたちを支えていくことが、これからも求められています。
▲女川向学館のスタッフの皆さん(向かって右端が多田さん)。現在スクール生は幼児から高校生まで160人以上。町内の小中学生の約4割が通っています。
▲女川町の中心部。復興工事のトラックがひっきりなしに行き交い、子どもが安心して徒歩通学できる環境にはありません。